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「自分のお金はほとんど使わずに、銀行のお金で資産をつくれます」。
ワンルーム投資の営業では、ローン(他人資本)で物件を買い、入居者の家賃で返済してもらう、という説明がよく使われます。
一方で、提案書を見ると「毎月◯円の持ち出し」と書かれていて、本当に他人のお金だけで成り立つのか疑問に思う人も少なくありません。
この記事では、ローンの返済のうち、どれだけを家賃でまかない、どれだけを自分の持ち出しで払うことになるのかを計算し、「他人資本で資産形成」という説明を確かめます。
この記事の結論
- 2,500万円の提案を現実寄りの前提で計算すると、35年のローン返済約3,371万円のうち、約1,114万円(約33%)は自分の持ち出しでした(この記事の試算)。
- 他人資本を使う費用として、35年で約871万円の利息を払います。金利が上がる厳しめの前提では約1,283万円です。
- 持ち出しの累計を差し引くと、35年後に資産形成になっているかは、物件の相場価格と前提しだいで、厳しめの前提ではマイナスになりました。
- ローンの返済義務はすべて自分にあります。空室の月は約9.5万円を自分で払う必要があり、これを許容できないなら買わない判断が合理的です。
「他人資本」のワンルーム投資でも、ローン返済の一部は自分の持ち出し
| 項目 | 35年の合計 | 割合 |
|---|---|---|
| ローン返済の総額(元金2,500万円+利息) | 約3,371万円 | 100% |
| 家賃から費用を引いた残りでまかなう分 | 約2,257万円 | 約67% |
| 自分の持ち出しでまかなう分 | 約1,114万円 | 約33% |
「他人資本で資産形成」という説明のうち、物件を買うお金を銀行から借りる、という部分は事実です。
しかし、その借りたお金を返すのは自分であり、家賃で足りない分は、毎月の持ち出しとして自分のお金で返すことになります。
ローン返済のうち、家賃でまかなえる割合は前提で大きく変わる
| 前提 | ローン返済の総額 | 持ち出しの総額 | 持ち出しの割合 |
|---|---|---|---|
| 提案書によくある前提(固定資産税は別) | 約3,371万円 | 約219万円 | 約7% |
| 上の前提+固定資産税 | 約3,371万円 | 約429万円 | 約13% |
| 現実寄り | 約3,371万円 | 約1,114万円 | 約33% |
| 厳しめ(6年目から金利+1%など) | 約3,783万円 | 約1,778万円 | 約47% |
提案書によくある「家賃も費用もずっと同じ」という前提なら、持ち出しは35年で約219万円で、ローン返済総額の約7%にすぎません。
この前提であれば、「ほとんど他人のお金で買える」という説明も、それほど外れてはいないように見えます。
ところが、固定資産税を入れると約13%、家賃の下落・修繕積立金の値上げ・空室・設備交換を入れた現実寄りの前提では約33%になります。
家賃の下落が大きく、金利も上がる厳しめの前提では、返済総額の約47%、つまり半分近くを自分の持ち出しで払う計算になりました。
「他人資本」と言える割合は、提案書の前提が現実に近いかどうかで大きく変わるということです。
自分の提案の数字は、下の計算表で同じ前提に当てはめて確かめられます。
月々の持ち出しを35年の総額で見る方法は、月1万円・35年の持ち出しを検証した記事でも解説しています。
提案書の数字を入れて、持ち出しの総額を計算する
※ 3つの前提で比べます。
「提案書の前提」=家賃・管理費・修繕積立金が一定、空室・設備交換なし(固定資産税は含む)。
「現実寄り」=家賃が毎年0.5%下落、修繕積立金が5年ごとに段階的に上がり16年目に国土交通省ガイドラインの平均目安(335円/㎡・月)に到達、4年に1回1か月の空室と原状回復・募集費15万円、12年目と24年目に設備交換25万円。
「厳しめ」=現実寄り+家賃が毎年1%下落、6年目から金利が1%上昇。
所得税・住民税の増減は含みません。実際の収支は物件・契約・金融機関の条件で変わります。
ポイント
- 提案書の前提では、持ち出しは返済総額の約7%に見える。
- 現実寄りでは約33%、厳しめでは約47%を自分で払う試算。
- 「他人資本」と言える割合は、前提しだいで大きく変わる。
利息の約871万円は、他人資本を使うための費用
| 前提 | 借入額 | 返済総額 | 利息 |
|---|---|---|---|
| 金利1.8%のまま | 2,500万円 | 約3,371万円 | 約871万円 |
| 6年目から金利2.8% | 2,500万円 | 約3,783万円 | 約1,283万円 |
他人資本は、無料で使えるお金ではありません。
2,500万円を金利1.8%・35年で借りると、元金とは別に約871万円の利息を払うことになります。
変動金利で借りて、6年目から金利が1%上がった場合は、利息は約1,283万円に増えます。
この利息は、家賃と自分の持ち出しの両方から払われています。
つまり、他人資本を使うほど利息の負担も大きくなり、その分だけ持ち出しが増えやすくなるという関係です。
他人資本を使って資産をつくるのが有利になるのは、物件から得られる利益が、利息を含む費用を上回る場合に限られます。
家賃から費用を引いた利回りが金利を大きく上回らない物件では、他人資本を使うほど、持ち出しが増えることになります。
金利が上がったときの影響は、金利上昇とワンルーム投資の持ち出しの記事で詳しく解説しています。
ポイント
- 2,500万円・35年の利息は約871万円、金利が1%上がると約1,283万円。
- 利息は、家賃と自分の持ち出しの両方から払われる。
- 利回りが金利を大きく上回らないと、他人資本は持ち出しを増やす。
他人資本のワンルーム投資は、持ち出しを入れると資産形成になるのか
| 前提 | 購入価格が相場どおり | 購入価格が相場より20%高い |
|---|---|---|
| 現実寄り | 約+575万円 | 約+234万円 |
| 厳しめ | 約−89万円 | 約−429万円 |
他人資本で資産形成ができているかは、物件の価値から残りのローンを引いた「自分の資産」と、それまでに払った持ち出しの累計を比べると分かります。
上の表は、35年後にローンを返し終えた物件を売ったと仮定して、その手取りから持ち出しの累計を引いたものです。
売ったときの手取りから残りのローンを引いた「自分の資産」の推移
| 時期 | 購入価格が相場どおり | 購入価格が相場より20%高い |
|---|---|---|
| 5年目 | 約+56万円 | 約−404万円 |
| 10年目 | 約+237万円 | 約−201万円 |
| 20年目 | 約+700万円 | 約+305万円 |
| 35年目(完済後) | 約+1,689万円 | 約+1,349万円 |
ローンの返済が進むと、残りのローンが減り、物件を売ったときに手元に残るお金が増えていきます。
これが「他人資本で資産をつくる」という説明の中身です。
ただし、表のとおり、購入価格が相場より20%高い場合は、10年目に売っても約201万円が足りず、手元のお金で穴埋めが必要になります。
新築の物件や、相場より割高な物件では、買った時点で「自分の資産」はマイナスから始まるということです。
また、物件の価値が毎年1%ずつ下がるという仮定は、立地や建物の状態によって大きく変わります。
35年後の価値を、提案書の想定どおりに見込めるかは、近くの中古物件の成約価格などで確かめる必要があります。
購入価格と相場の差の確かめ方は、提案されたワンルーム投資が割高かを確かめる記事で解説しています。
ポイント
- ローンの返済が進むほど、売ったときに残るお金が増える。
- 相場より20%高く買うと、10年目に売っても約201万円足りない試算。
- 将来の物件の価値は、近くの中古の成約価格で確かめる。
持ち出しの累計を引くと、資産形成になっているか
| 時期 | 現実寄り | 厳しめ |
|---|---|---|
| 5年目 | 約−35万円 | 約−39万円 |
| 10年目 | 約+33万円 | 約−96万円 |
| 20年目 | 約+154万円 | 約−219万円 |
| 35年目 | 約+575万円 | 約−89万円 |
「自分の資産」が増えていても、その途中で払ってきた持ち出しは、自分のお金です。
そこで、売ったときの手取りから残りのローンを引き、さらに持ち出しの累計を引いて、本当に資産が増えたかを計算したのが上の表です。
購入価格が相場どおりの場合、現実寄りの前提では35年目に約575万円のプラスになりました。
一方で、家賃の下落が大きく、金利が上がる厳しめの前提では、35年たってもマイナスのままでした。
また、35年間で払った持ち出し約1,114万円を、ほかの方法で積み立てていれば、その運用益も得られたはずです。
資産形成として比べるなら、同じ金額を別の方法で運用した場合と比べる必要があります。
なお、この表には所得税・住民税の増減、購入時の諸費用、売却時の税金を含めていません。
同じ月額を積み立て投資に回した場合との比べ方は、ワンルーム投資の持ち出しとNISAを比べた記事で解説しています。
ポイント
- 持ち出しの累計を引いて、本当に資産が増えたかを確かめる。
- 厳しめの前提では、35年たってもマイナスになる試算。
- 同じ金額をほかの方法で積み立てた場合とも比べる。
「他人資本で資産形成」の提案を、別の会社にも見てもらいたい人へ
手元の提案書をもとに、販売会社とは別の会社の無料オンライン面談で、持ち出しと将来の損益を計算し直してもらう方法もあります。
「他人資本」と言われるワンルーム投資で、持ち出しが増えたときに負うもの
| 場面 | 誰が払うか |
|---|---|
| 空室で家賃が入らない月 | ローン返済・管理費・修繕積立金などを全額自分で払う(月約9.5万円の試算) |
| 金利が上がったとき | 増えた返済額を自分で払う |
| 売っても残りのローンを返せないとき | 足りない分を手元のお金で払う |
ローンの返済義務は、家賃が入らなくてもすべて自分にある
| 項目 | 月額 |
|---|---|
| 家賃収入 | 0円 |
| ローン返済 | −80,273円 |
| 管理費・修繕積立金 | −10,000円 |
| 固定資産税など(月割り) | −5,000円 |
| 持ち出し | 約−95,300円 |
「家賃で返済してもらう」と説明されても、ローンを借りているのは自分です。
入居者が退去して家賃が入らない月も、銀行への返済は止まりません。
上の表のとおり、空室の月は、ローン返済・管理費・修繕積立金・固定資産税を合わせて月約9.5万円を自分で払うことになります。
次の入居者が決まるまで数か月かかれば、その分だけ持ち出しが積み上がります。
また、家賃保証(サブリース)を付けても、保証賃料は見直されることがあり、返済の責任が自分にあることは変わりません。
団体信用生命保険(団信)に入っていれば、亡くなったときや所定の高度障害になったときにローンの残りが保険で返済されますが、それ以外の理由で家賃が入らないときは対象外です。
「他人資本」という言葉からは、他人がリスクを負ってくれるような印象を受けますが、返済のリスクを負うのは借りた本人です。
家賃保証の仕組みは、家賃保証で持ち出しは消えるかを検証した記事で解説しています。
ポイント
- 空室の月は、月約9.5万円を自分で払う試算。
- 家賃保証を付けても、返済の責任は自分にある。
- 返済のリスクを負うのは、他人ではなく借りた本人。
「他人資本」の説明を受けたら確かめたい3つの質問
| 質問 | 確かめる理由 |
|---|---|
| 35年のローン返済のうち、持ち出しで払う分はいくらですか | 「他人資本」と言える割合が分かる |
| 家賃の下落・修繕積立金の値上げ・空室を入れると、持ち出しはどうなりますか | 提案書の前提が現実に近いかが分かる |
| 10年後に売った場合、手取りはローンの残りを上回りますか | 途中で売るときの穴埋めの有無が分かる |
「他人資本で資産形成」という説明を受けたときは、上の3つの質問をしてみてください。
1つ目は、35年のローン返済のうち、自分の持ち出しで払う分がいくらになるかです。
この数字を答えられない、あるいは「持ち出しはほとんどありません」としか言われない場合は、提案書の前提を自分で計算し直す必要があります。
2つ目は、家賃の下落や修繕積立金の値上げ、空室を入れた場合の持ち出しです。
家賃も費用もずっと同じ前提の収支しか示されないなら、持ち出しが小さく見積もられている可能性があります。
3つ目は、10年後などに売った場合に、売却額でローンの残りを返せるかです。
転勤や結婚などで途中で売る可能性がある人にとって、穴埋めが必要かどうかは大切な判断材料になります。
回答はメモに残し、自分で計算した数字と見比べましょう。
ポイント
- 持ち出しで払う分の総額を、必ず聞く。
- 家賃の下落や値上げを入れた収支を出してもらう。
- 途中で売った場合に、ローンの残りを返せるかも確かめる。
他人資本のワンルーム投資、持ち出しを払ってよい人・見送る人
| 検討できる人 | 見送った方がよい人 |
|---|---|
| 持ち出しの総額と、返済総額に占める割合を計算して納得している | 「ほとんど他人のお金で買える」と考えている |
| 空室の月に約9.5万円を払っても家計が困らない | 空室が数か月続くと家計が苦しい |
| 購入価格が相場から大きく外れていないことを確かめた | 相場との差を調べていない |
「他人資本」の説明でワンルーム投資を、今は買わない方がよいケース
| ケース | 理由 |
|---|---|
| 「自分のお金は使わない」と説明された | 現実寄りの前提でも、返済総額の約3割は持ち出し |
| 持ち出しの総額を示してもらえない | 資産形成になるかを判断できない |
| 購入価格が相場より大幅に高い | 「自分の資産」がマイナスから始まる |
| 空室の月の持ち出しを払えない | 返済のリスクを負えない |
上のケースに当てはまるなら、ワンルーム投資は今は買わない判断が合理的です。
特に、「自分のお金はほとんど使わない」と説明された場合は注意が必要です。
この記事の試算では、現実寄りの前提でもローン返済総額の約3割、厳しめの前提では半分近くを、自分の持ち出しで払うことになりました。
持ち出しの総額を示してもらえない場合も、資産形成になるかどうかを判断する材料がそろっていません。
また、購入価格が相場より大幅に高い物件は、買った時点で「自分の資産」がマイナスから始まり、取り戻すまでに長い時間がかかります。
他人資本を使うこと自体が悪いわけではありませんが、持ち出しと利息を払っても資産が増えると、自分で計算して納得できるかが判断の分かれ目です。
見送った場合でも、毎月の持ち出しにあたる金額を、ほかの方法で積み立てていくことはできます。
ポイント
- 「自分のお金は使わない」という説明は、試算と合わない。
- 持ち出しの総額が分からないなら、判断を急がない。
- 持ち出しと利息を払っても資産が増えるかを、自分で計算する。
他人資本の提案と持ち出しを、別の会社にも見てもらう
| 相談できること | 受け取った提案書をもとにした、収支シミュレーションと物件価格の確認 |
|---|---|
| 形式 | オンライン(Zoomなど)または対面。30分以上 |
| 費用 | 無料 |
| 注意点 | 面談先も不動産投資の事業者で、物件の紹介を受ける場合がある。年収の確認と融資の診断がある |
持ち出しの総額や、将来売ったときの損益を自分で計算しても、物件の相場価格をどう見積もればよいか迷うことがあります。
そのようなときは、提案している会社とは別の会社に、提案書を見てもらう方法があります。
ここで紹介する無料オンライン面談では、手元の提案書をもとに、年収やライフプランに合わせた収支シミュレーションを作ってもらえます。
ただし、面談先も不動産投資の事業者であり、完全に中立な立場ではありません。
物件を紹介される場合もありますが、買うかどうかは自分で決めてかまいません。
面談では、この記事の3つの質問をそのまま聞き、持ち出しで払う分の総額と、途中で売った場合の損益を確かめてください。
答えが提案書の説明と食い違う場合は、どちらの前提が現実に近いかを比べることが大切です。
ポイント
- 提案の持ち出しと将来の損益を、別の会社の視点で確かめられる。
- 面談先も事業者で完全な中立ではない。買わない判断も自由。
- 申し込みには年収800万円以上などの条件がある。
「他人資本」の提案、持ち出しの総額を確かめてから決めませんか
- 手元の提案書をもとに相談できる
- 価格の妥当性と、年収に合わせた収支シミュレーションを確認できる
- オンラインで自宅から参加できる(無料)
【この記事の試算について】価格2,500万円・全額ローン(金利1.8%・35年・元利均等)、家賃90,000円、管理委託料5.5%、管理費7,000円、修繕積立金3,000円から16年目に8,375円(国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)の平均目安335円/㎡×25㎡)まで段階的に上昇、固定資産税など年6万円とした架空の試算です。「現実寄り」は家賃が毎年0.5%下落、4年に1回1か月の空室と原状回復・募集費15万円、12年目と24年目に設備交換25万円を加え、「厳しめ」は家賃が毎年1%下落し、6年目から金利が1%上がるとしています。売却時の価値は、購入時の相場価格(購入価格どおり、または購入価格の80%)から毎年1%下がると仮定し、仲介手数料(売却額の3%+6万円、税込み)と抵当権抹消などの費用5万円を差し引いています。所得税・住民税の増減、購入時の諸費用、売却時の税金は含みません。